ビートルズよりAKB48の活動期間は長い。「時間が過ぎるのが早くなった」は本当か?【近田春夫×適菜収】
【近田春夫×適菜収】連載「言葉とハサミは使いよう」第9回
◾️グループサウンズとビートルズのムーブメント
適菜:ジャネの法則について最近考えていたことがあるんです。
近田:おっ、奇遇だねえ。
適菜:私は、1975年生まれだから、その30年前の1945年は敗戦の年だった。今私は50歳なので30年前は20歳だった。感覚的にはつい最近です。
近田:そうだよ。昨日みたいなもんだよ(笑)。
適菜:そう考えると、自分が生まれた30年前に広島と長崎に原爆が落とされたという事実が不思議です。子供のときは歴史上の出来事みたいに感じていたのに。
近田:例えば、グループサウンズというムーヴメントは、1965年に勃興して、70年には終焉を迎えてしまう。たかだか5年しか持たなかったのよ。あのビートルズだって、実質的な活動期間は10年程度。それに対し、AKB48ってグループは、もう20年も活動を続けているわけ。そう考えると、この20年の経過って、ものすごく速いでしょ。これは、やっぱり、自分が齢を取ったからだけじゃなくて、絶対的な時間の進み方が速くなったことの一つの証明だと思うんですよ。
適菜:なるほど。

近田:でも、ジャネの法則は、正直、科学的合理性には乏しいらしい。
適菜:経験則ですからね。
近田:そこで気づいたの。世の中って、いろんなことが合理的に行われているはずなんだけど、その根底にあるのは情緒であると。
適菜:どういう意味ですか?
近田:ある迷信を正当化させるために、合理性が援用されているんじゃないかと。だって、ノーベル物理学賞を獲っているような学者でも、キリスト教を信じていたりするよね。でも、キリスト教の教義には、科学的根拠はない。そういった脆弱性が、今、すごく可視化されるようになってきたんじゃないかな。
適菜:陰謀論もそうですね。学者が参政党の裏にいたりもします。
近田:毎日、恐ろしい規模でパンドラの箱が開いてますよ。
適菜:社会の底も抜けてます。